お も か げ

あの夜、あの陰気な穴ぐらのようなバーのなかの光のすべてを、自分の周囲に光輪のように集中させて、鮮烈な魅力を放散させていた男ジョヴァンニの

9/7-10

9/7木
EMS17 Welcome Concert@名古屋市立大学 芸術工学部 北千種キャンパス 大講義室

鈴木悦久「GRAIN(2017)」
世界中の電子音楽家?が集まる会議が4日間あって、その中でのJapanese Society for Electronic Music主催のイベント。鈴木さんもJSEMの会員とのこと。ESMは調べたら多分Electroacoustic Music Studiesの略です。鈴木さん以外は映像を使う人だったけど、鈴木さんはスクリーンを使わず、会場を真っ暗にして音のみ。配布されたパンフレットの作品の解説には「楽器演奏における演奏動作から得られる情報を用い、リアルタイムで音響を合成するライブパフォーマンス作品」とあって、確かに鈴木さんのいる位置からMimizでも使う親指ピアノの音が聞こえてくる。音の変化もそれに呼応するように聞こえる時もあったけど、会場が暗く、鈴木さんもPA席みたいなところでお客さんに背中を向けての演奏だったので、これが生演奏なのかの確信は持てず(後日、鈴木さんに話を聞くとやっぱり生演奏だったそう)。親指ピアノの音が聞こえつつの、ぼんやり広がっていく音もあって、それが合成された音なのかな。少しパーカッシブな電子音も入る展開で、途中1回区切りがあって、合成音の聞こえ方が変わったけど、あんまり覚えておらず。もっと純粋な電子音っぽく変わったんだったかな。でも、Mimizのイメージから離れるような音ではなかったはず。10分位の作品。

渡辺愛「esuquisse(2017)」
車が通る音やフランス語っぽい会話が聞こえてくるフィールドレコーディングな音がメインで、途中ピアノや揺れるようなエフェクト音も入る。最後はうるさく通り過ぎる電車の音。ピアノはメロディーのあるキレイな音で、花の絵とかと一緒に流すと似合いそう。映像はなく、何もない白いスクリーンに照明を当てるだけの演出で、照明の淡い光が黄→緑→ピンクみたいに色を変えていく。この演出良かったです。

アレックス・シグアン「detritusⅡ」
少しぼやけた映像に、90年代後半な、映画「マトリックス」やハリウッド版「Godzilla」のイメージなフォントの文字が出てくる。文章は短いけど「PRIDE IS SATISFIED」などメッセージ性のある言葉。流れる音は少しノイジー気味。後半はその方向性は残しつつも、顕微鏡に映した水滴の下に文字があるみたいな演出。音は途切れているのに映像は流れ続けるのに奇妙な感覚もあったけど、ぼやけた映像の効果を上げていた気がします。

林恭平「Sunflower」
ストーリー性のある映像で、最初はモノクロで左右対称なパチンコ台みたいな映像。まどかマギカの魔女時を感じさせるダークファンタジーな演出で、次に二人のキャラクターが出てきて、片方の頭は実写の花びらで、もう片方の頭から出てきたミツバチが花びらの方に受粉すると、視力が良くなり過ぎて逆にモザイク状に物が見えるようになって、そこからはダークファンタジーな要素が残りつつも、一気にオオルタイチのMVみたいな世界観。同じ動きを繰り返したり、背後に出てきた文字をずっと言ってるみたいなキャラクター。音はダンスビートではないけどオオルタイチに近い感じもあり。途中、画面いっぱいが赤い波みたいなサイケデリックな映像になると轟音が鳴り続ける。今回の作品の中では強烈な印象を残す。

宮木朝子「Hidden Garden(2017)」
作品の解説に「馬場ふさこ(VIDEO)」とあるので、映像は馬場さんが作成したってことかな。海の中の、階段が多い遺跡だったり、神殿の柱が出てきたりする映像。他にもDNAみたいに絡み合った糸とかクラゲっぽいのが出てくるんで、やっぱり水の中のイメージ。柱の一つにズームアップすると、また遺跡の場面にループして、最後は星空の映像。音の方はあんまり覚えてないけど、映像に合った厳かな音だった気がする。視覚と聴覚だと視覚のイメージの方が残りやすいのかな。

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9/9土(昼)
「暑い日」A-CHAN写真と音楽のSlide show@KDハポン

スティーブジャクソン
1曲目は「点の世界」。ここ最近のアレンジ同様スローな演奏。濱田さんの後半のギターの入り方が良かったです。2曲目は「I Saw Her Standing Nowhere」。これも濱田さんのギターが良かった印象で、後半のポツポツギターが歌謡GSみたいで、曲をよりポップにする。3曲目の「the end of 夏の終わり」では、鈴木さんのスネアのリムショットハイハットのみの音が格好良い。濱田さんのポツポツギターはこの曲でだった気もする。夏のこの時期の、この曲は良いです。次からは曲間なしに、まず「フォークミュージック」。曲中の一旦ブレイク後、鈴木さんはバスドラをずっと踏み続け、モモジさんベースもそれに合わせるように、低音重視に弾き続ける。続いて「そっとわれにかえる」。今回は濱田さんの噛み合わないギターもばっちりで、イントロの時点で良いと思ってしまう。最後はやっぱり低いフレーズが入るようになった「ミルクと牛乳」。「フォークミュージック」のブレイク後の展開が新しいアレンジなのかな。

「暑い日2017」のスライドショー前半
スティーブジャクソン終わりで会場が暗くなって、スライドショーがスタート。住宅街の中で撮られたような写真が続く。音楽付きで、最初はバンドみたいな音に思えたけど、段々ラップトップで作ったようなけたたましい音が、ずっと盛り上がりのピークを維持したまま流れなく鳴り続ける。これは厳しい。暑苦しい日になりそう。写真には名所や記号となるようなものが映っておらず、「暑い日」なので場所を特定させる要素はいらないのかな~となんとなく思う。一番印象に残ったのは破れた三角コーンの写真。20分位経つと、今日の司会などをしていた、多分RAINROOTS湯地さんが一旦スライドショーを止めて、A-CHANがどういう人物なのかとかこの作品が2003年に撮られた写真であることを説明。「暑い日」のスライドショーはまだ残り40分あるそうだけど、一気に見るのは辛いそう。そんな作品を流しているのか…とも思ったけど、同意見です。

鈴木悦久
一昨日に見たセットと同じで、時間はもう少し長めの演奏。今回は演者との距離も近く、どういう演奏をしているのかも見えるので、生の親指ピアノの音とスピーカーからの合成音が段々と離れていくのが分かる。パーカッシブな電子音は一昨日と同じ印象だけど、その後のノイズは改めて聞くとMimizとは違うノイズ音。正体不明なひんやりした音で、不安な感覚に陥る。弦楽器の音にも近いと思ったけど、TV on the RadioとかDirty Projectorsの声の感触にも近い。一昨日は分からずじまいだったけど、今回ので掴めた気がする。鈴木さんライブ時にも「暑い日」の続きが再生されていて、元々入っている音を消して、鈴木さんの音でスライドショーを進める。さっきのけたたましい音で聞くよりかは写真も見やすい環境になる。

「暑い日2017」のスライドショー後半
鈴木さんライブが終わると、間を置かずに「暑い日」の元々の音源を流してのスライドショーの続き。やっぱりけたたましい音。鈴木さんのライブ時に流れていたのとごっちゃになっているかもしれないけど、写真は都市部の風景になっていて、そうなると2003年だと分かる服装や広告が映されていたりする。そう思うと住宅街って時間が流れていないのかも。雪の写真だったり季節が分かる写真もちょいちょい出てきたりする。最後の音はギター色が強くなって、日本語のセリフで終了。その後、湯地さんによる更なる解説。今回DVDで再生していたけど、そうなると解像度が落ちるとかプロジェクターの性能が~~みたいな話で、物販にあるUSBデータで見るのが本来で、それ用のPCモニタも持ってきているんで、興味ある方は見て下さいとのこと。湯地さんも一番印象に残ったのは前半の破れた三角コーンの写真らしく、そこで一旦停止した時に残り時間が表示されて、まだ1時間再生時間が残っていることにぐっときたそう。そこまで行くと知らんわって気もするけど、個人の感覚なんで分からないものです。
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9/9土(夜)
工藤祐次郎 夏の全国ツアー 名古屋編@きてみてや

鈴木涼(リパ)
オープニングアクトとして4曲のみ。1曲目は、以前のソロ時にはシンセでファミスタっぽい音を鳴らしていた、転調が特徴的な曲。今日は全曲アコギで演奏。2曲目はソロでもバンドでも結構演奏している猫の曲。3曲目は「ハイホー」のカバーで、これも聞いたことある曲。最後は「Sweet Memories」ってタイトルの曲で、この曲は多分聞くのは初めて。カバーではないと思うけど、あんまりリパくんっぽくないメロディーだな~と思いました。今日のイベントの主催者で、足立さんと永見さんとリパくんは同い年とMC。

足立涼
ガットギターの優しい音に、声・メロディー・歌詞も優しい。親しみやすいっていうよりは本当に優しいって感覚。ムーン時代に感じたUSインディーとは違うイメージ。音源には入ってなかったけど、釣りをするみたいな歌詞の曲が確かあって、足立さんが釣りをする人ってのは知っていたんで、趣味を歌詞に入れているのは良いな~と思いました。さっきのリパくんMC時の同い年トークで、永見さんから「テイラー・スウィフトも!」って野次が飛んでたけど、足立さんはMCにて西野カナも付け加える。

永見恵利
短い曲やらカズーを使う曲が続いて、アメリカのアニメ「Adventure Time」にも使われたLAKEの曲のカバーも。LAKEがどういう規模で人気があるのかは知らないけど、アニメにも使われるんだな。で同い年トークのMCになって、中学生の時に映画「キャシャーン」が公開されたらしく、その主題歌の宇多田ヒカル誰かの願いが叶うころ」のカバー。この曲がすごく良くて、今の宇多田・紀里谷夫妻の離婚している状況を思うと、ぐっとくる歌詞。単に永見さんの声で歌われてたのに感動していただけかもしれないけど。その後、暗い曲が続きます宣言があっての、前のハポンでも披露していた「道路を挟んでじゃんけんしよう」って歌詞の曲で、次に続く歌詞が「テニス部たちに笑われる」ってのもすごく良かった。次は「我が過ち」って繰り返し歌う曲で、宗教的ではないけど神聖な感じ。これもキラーチューン。最後はけだものの曲で、「ミラーボールを蹴っ飛ばして、お巡りさんにキスをしろ」って歌詞がパンクみたい。歌詞の良さが気になるようになったライブでした。同い年トークの続きでは相撲取りの高安も同い年に挙げていて、明日からの相撲(9月場所)楽しみですね~とか話す。あと、やっぱり永見さんってすごいと思ったことは、後ろの方でライブ中でも関係ない話をしている人たちも永見さんのライブ時には黙って聞いていたことで、それはそれで当たり前のことなんだろうけど、永見さん以外の演者時は喋るのを止めなかったので、とりあえずライブを聞いてみて、この人のは聞かなくていい、話を続けようって判断を下していることに、好きな音楽がその場で否定されてるんでショックを受ける。

工藤祐次郎
ギターにエフェクト掛けたり逆回転な音も出したりするけど、大部分はアコギでの弾き語り。あとはキーボードもリズムマシーン的に鳴らしたりもする。曲をポップに聞かせる作曲法がリパくんに似ている気がしました。こういう感覚を持つのは初めて。歌詞も良くて、普通に良いものとして聞く。特徴があるようでないのも魅力的なのかな。途中で神戸で対バンしたカニコーセンさんから宿題として出された、夏の思い出の作文を読む。ポエトリーではなく、本当に紙に書いた文章を朗読。高校生の時のラブホテルでの先輩の肩の叩き方の話。良い話でした。セットリストはウーロンハイの曲、キーボードを弾き始めて途中になって「この曲インストなんです」って紹介する曲、阿佐ヶ谷の餃子イベントのママの曲など。最後は遠距離恋愛の彼女が東京まで会いに来てくれて、東京駅で見送る時に「今度うなぎでも食べに行こう」ってセリフが格好良かったんで、そのことを歌った「東京うなぎ」。豊田道倫さんの「うなぎデート」を思い出すタイトルなので、ずっと学生服着ている豊田さんが頭の中にちらつく。アンコールの拍手の中、SMAP「SHAKE」を演奏しそうだったけど、リパくんとお客さんで来ていたヨースケくんのトウガンズ二人に、前回と同じ展開と言われるのが嫌なので別の曲をすることに。キーボードで空間的な音を出して、何が始まるかと思ってたら、ZONE「secrete base」のカバー。夏の曲です。工藤さんはリパくん達と同い年ではないけど、井上真央が同い年らしく、井上真央が成人式でお酒が飲めるようになりたいって言ってたのが可愛いと思ったそう。
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9/10日
Series@KDハポン

ロック墓場
久しぶりに見るけど格好良さは相変わらず。小池さんがギター弾いてる時の右手の上げ方がロック墓場!と思いました。アルバムからの「Let It Hakaba」「Point」「Master of "P"」、少しアレンジが変わった気もする最後の「Your Life」の他、多分初めて聞くような曲もあり。小池さんがギターで憂いのある音を出すのは聞いたことあるけど、アベさんが空間的なシンセ音を鳴らしているイメージがあんまりなかったので、ちゃんとシンセっぽい音作りもできるんだな~と思う。曲の途中で「名古屋!」って言ったり、「Oi!Oi!」みたいに手を上げて煽ったりと変なテンションの小池さん。バンドメンバーの移住があったりと、バンドの活動があまりできなくて、先輩・同期のバンドが新曲書いているのを羨ましく見ていた、のMCも意外でした。自分たちの音源を自分たちでリマスタリングするのは、ビートルズツェッペリン以外だと自分たち位って言ってたのが面白かったです。

ベアーズマーキン
去年年末にハポンで見た時のような、どこにも向かわない感覚はなし。踊っているようなアルペジオ中心のギターでライブは進む。前からの印象でもあるけど、キーボードがマリンパっぽく鳴っているのも良い。ベースも気になる音、フレーズをどんどん出し続ける。セットリストは「トランプマン」「What's Gonna Happen」「峠」など。アルバム未収録の曲も何曲かあり。最後から2曲目の「EERON」のドラムの入り方が今日のハイライト。格好良かったです。

POP-OFFICE
バンドの個性につながる、低い声質による癖のある歌い方。POP-OFFICEも久しぶりに見るライブだったけど、確かにこんなんだったな~と思い出しながら見る。音源をまだ持っていなかったので、海外バンドっぽさがあるイメージだったけど、それはあまり感じず。ベースの歪ませ方がバンドのライトニング・ボルトではないけど、稲妻みたいな音。ドラムの叩き方に少しベアーズマーキンとの共通性を感じて、不思議な対バンに思えたけど納得する。今日はPOP-OFFICE企画で、POP-OFFICE自体も1年9ヵ月振りのライブだったけど、こういう面子での自主企画なりイベントが最近ないんで、継続的に続けて欲しいです。ベイスターズの勝敗を気にしていた野球ボーイな島田さん。